会議を丸ごとAIが支援 — リアルタイム文字起こし・翻訳・要約を AWS で実現する「Live Meeting Assistant」

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会議を丸ごとAIが支援 — リアルタイム文字起こし・翻訳・要約を AWS で実現する「Live Meeting Assistant」

ひとことでいうと

LMA(Live Meeting Assistant) は、会議中の音声をリアルタイムで文字に起こし、AI がその場で質問に答えてくれる AWS 公式のオープンソースツールです。Zoom・Teams・Google Meet・Chime・WebEx など、よく使われるビデオ会議ツールにボットが自動で参加する機能も備えています。AWS のクラウドサービスを組み合わせて作られており、個人から企業まで幅広く使える本番品質の構成です。会議の「聞き漏らし」「メモの取りこぼし」「言語の壁」をまとめて解決したい方に向けて設計されています。

こんな人におすすめ

会議中にメモを取りながら話に集中したいビジネスパーソン LMA が音声を自動で文字起こしし、会議の要約やアクションアイテム(次にやるべきこと)も自動で生成します。途中参加した人へのリアルタイム共有にも対応しているため、会議後のフォローアップ作業がぐっと減ります。

英語や多言語でミーティングをするエンジニア・チームリーダー 「翻訳モード(Translator Mode)」を使うと、ボットが会議に参加して発言をリアルタイムで相手の言語に翻訳し、音声で読み上げます。双方向の AI 通訳として機能するため、言語の壁を気にせずコミュニケーションが取れます。

AWS インフラを担当する IT チームやクラウドアーキテクト CloudFormation(AWS の「インフラを設計図どおりに自動で構築する仕組み」)を使ったワンクリックデプロイに対応しており、VPC・Fargate・DynamoDB・Bedrock 等の本番グレード構成が数十分で立ち上がります。アクセス制御・コスト試算・Well-Architected フレームワーク対応まで整備されているため、エンタープライズ導入の参考実装としても活用できます。

インストール・使い方

LMA は AWS のクラウド上に構築するツールです。パソコンに直接インストールする必要はなく、AWS アカウントがあれば数十分で動く環境が整います。操作は「ターミナル(文字を入力してコンピュータに命令を送る画面)」と「AWS のブラウザ管理画面」を使います。以下のコマンドはすべてコピー&ペーストで実行できます。

Step 1: 前提条件を確認する

AWS アカウント・Amazon Bedrock のモデルアクセス許可(Claude 等)・適切な IAM 権限(AWS 上での操作権限)が必要です。デプロイ先のリージョン(サーバーの設置場所)は us-east-1(バージニア北部)または us-west-2(オレゴン)を推奨します。Amazon Bedrock の Claude モデルを使う場合は、AWS マネジメントコンソールの「Bedrock → モデルアクセス」から事前に有効化し、利用規約への同意が必要です。

Step 2: リポジトリを手元にコピーする

リポジトリとは「ソースコードの置き場」のことです。以下のコマンドを実行するとファイル一式がダウンロードされます。

git clone https://github.com/aws-samples/amazon-transcribe-live-meeting-assistant
cd amazon-transcribe-live-meeting-assistant

# ドキュメント一覧を確認する
ls docs/
# quick-start-guide.md, meeting-assistant.md, virtual-participant.md 等が表示されます

# クイックスタートガイドの内容を読む
cat docs/quick-start-guide.md

docs/ フォルダにはクイックスタート・MCP 設定・セキュリティ・Well-Architected ガイドが一式そろっています。まずここを読むと全体像が把握しやすくなります。

Step 3: CloudFormation スタックをデプロイする

AWS マネジメントコンソールで「Launch Stack(スタックを起動)」ボタンを押すと、CloudFormation のスタック作成画面に遷移します。テンプレート URL はリージョンごとに S3(AWS のファイル保存サービス)に公開されています。

# テンプレート URL の例(US East リージョン):
# https://s3.us-east-1.amazonaws.com/aws-ml-blog-us-east-1/artifacts/lma/lma-main.yaml
# スタック名: LMA

テンプレートとは「どのサービスをどう組み合わせるか」を記した設計図ファイルです。この URL を指定するだけで、必要な AWS リソースがすべて自動で作成されます。

Step 4: パラメータを入力してデプロイを開始する

スタック名・Bedrock モデルの選択・Virtual Participant(ボット参加者)の有効化・MCP サーバー設定などを画面の案内に従って入力します。完了まで 15〜30 分程度かかります。

Step 5: Web UI にアクセスして使い始める

デプロイが完了すると、スタックの「出力(Outputs)」タブに Web UI の URL が表示されます。その URL をブラウザで開くと React 製(モダンな Web 技術で作られた)の操作画面が表示されます。「Stream Audio」タブからブラウザのマイクで音声を流すか、「Virtual Participant」タブでビデオ会議の URL を入力してボットを参加させることができます。

動かしてみた

リポジトリをローカル環境(Python 3.12)にクローンして、構造を確認しました。主要なファイルは次のように整理されています。

./lma-browser-extension-stack/package.json
./lma-browser-extension-stack/tsconfig.json
./lma-websocket-transcriber-stack/
./lib/README.md
./docs/quick-start-guide.md
./docs/meeting-assistant.md
./docs/infrastructure-and-security.md
./utilities/test-mcp-api-key.sh

構成はブラウザ拡張(lma-browser-extension-stack)、WebSocket トランスクライバー(lma-websocket-transcriber-stack)、共有ライブラリ(lib/)の 3 層に分かれており、それぞれの役割が明確です。utilities/test-mcp-api-key.sh のような動作確認スクリプトも同梱されており、デプロイ後の検証手順が整備されています。

コスト面については、公式ドキュメントに以下の目安が記載されています。基盤インフラ(Fargate の WebSocket サーバー+VPC)が月額約 10 ドル、ボット参加用の EC2 インスタンスが 1 台あたり月額約 33 ドル、通話コストが 5 分あたり約 0.17 ドルです。使用量に応じた従量課金なので、小規模から始めて必要に応じてスケールさせる運用が向いています。

なお、本ツールは複数の AWS マネージドサービスを組み合わせた構成のため、AWS アカウントと CloudFormation デプロイが前提となります。ブラウザ単独で動くデモは提供されていませんが、公式ドキュメントサイト(aws-samples.github.io/amazon-transcribe-live-meeting-assistant)にアーキテクチャ図・デプロイ手順・各機能のスクリーンショットが掲載されており、全体像を視覚的に確認できます。

はじめの一歩 — すぐ試せる実践のコツ

  • まずドキュメントから読む: docs/quick-start-guide.md を最初に開くと、デプロイの全体像と必要な権限がひと目でわかります。
  • Bedrock のモデルアクセスを事前に有効化する: AWS コンソールの「Bedrock → モデルアクセス」で Claude モデルを有効化しておかないとデプロイ後に動きません。忘れやすいポイントです。
  • リージョンを固定する: us-east-1us-west-2 で統一してデプロイしましょう。途中でリージョンが混在するとサービス間の連携が取れなくなります。
  • Virtual Participant は後から有効化できる: 最初はブラウザのマイクで動作を確認し、慣れてからボット参加機能を追加するとトラブルシューティングが楽です。
  • コスト管理は AWS Budget で: 月額上限アラートを設定しておくと、想定外の費用を事前に検知できます。
  • MCP サーバーは必須ではない: Salesforce などの外部連携は後から追加できます。まずはコア機能(文字起こし+AI 応答)だけで試すのがおすすめです。
  • 検証スクリプトを活用する: bash utilities/test-mcp-api-key.sh でデプロイ後の MCP 接続確認ができます。

活用例

  • 社内会議の自動議事録・アクションアイテム生成: Zoom・Teams・Google Meet の URL をボットに渡すだけで、自動参加・録音・文字起こし・要約が実行されます。会議終了後は DynamoDB(AWS のデータベース)に保存されたトランスクリプトを自然言語で横断検索でき、「先月の予算会議で決まったこと」のようなクエリ(検索の問いかけ)で過去の内容をすぐ引き出せます。

  • グローバルチームへのリアルタイム通訳提供: Translator Mode を有効にすると、ボットが発言のたびに相手言語へ翻訳して音声で読み上げます。Nova Sonic 2(Amazon 製)または ElevenLabs の音声エンジンを選べるほか、Simli によるアニメーションアバターオプションもあります。

  • Salesforce・社内システムと会議 AI の統合: MCP サーバーとして Salesforce やカスタムサーバーを登録すると、AI アシスタントが会議中にリアルタイムで CRM(顧客管理システム)データの参照・更新を実行できます。「今話しているクライアントの直近の商談ステータスは?」という質問に会議中その場で答えられます。

  • 遅刻参加者へのリアルタイムキャッチアップ: 途中から参加したメンバーに「ここまでの要約」を即座に共有できます。大人数・長時間の会議ほど効果が大きく、参加者全員が同じ文脈を持った状態で議論を続けられます。

  • エンタープライズ向け参考実装としての活用: AWS Well-Architected フレームワーク対応・UBAC(ユーザーベースのアクセス制御)・コスト試算が整備されているため、社内ツールの設計指針や AWS 学習素材としてもそのまま活用できます。

  • 音声ベース社内ナレッジベースの構築: Bedrock Knowledge Base(意味を理解して検索するしくみ)を使うことで、過去の会議記録を「意味検索」できるナレッジベースとして蓄積していけます。テキスト検索では見つからない関連情報も引き出せるため、組織の暗黙知をデータ資産として残すことができます。

用語とポイント解説

Amazon Transcribe AWS が提供するリアルタイム音声認識サービスです。かんたんに言うと「マイクの声を即座に文字にするサービス」です。カスタム語彙や独自の言語モデルにも対応しており、専門用語が多い業務会議でも精度を高められます。

Amazon Bedrock AWS が提供するフルマネージド生成 AI の API です。かんたんに言うと「Claude や Titan などの AI モデルをサーバー構築なしで呼び出せるサービス」です。LMA では会議内容への質問応答・要約・アクションアイテム抽出にこのサービスを使っています。

Strands Agents SDK Amazon が開発した AI エージェント構築フレームワークです。かんたんに言うと「AI がツールを使いながら複数ステップの処理を自律的に実行するための開発道具」です。LMA の AI アシスタントはこの SDK を使って、検索・翻訳・外部連携を組み合わせた複雑なタスクをこなします。

MCP(Model Context Protocol) AI モデルと外部ツールを繋ぐ標準プロトコル(通信のルール)です。かんたんに言うと「AI が Salesforce や社内データベースなど様々なツールと話せるようにする共通の接続規格」です。このプロトコルを使うことで、会議中に AI が外部システムをリアルタイムで参照できます。

Virtual Participant(バーチャル参加者) ヘッドレス Chrome(画面を表示せずに動くブラウザ)を使ったボット参加者です。かんたんに言うと「人間のように会議に入室して録音・文字起こしを自動で行うロボット」です。ユーザーが手動操作しなくても、指定した会議 URL に自動で参加してキャプチャを続けます。

CloudFormation AWS のインフラをコード(設計図)で定義・自動構築するサービスです。かんたんに言うと「必要なサーバーやデータベースの構成を書いたファイルを渡すと、AWS が全部まとめて作ってくれる仕組み」です。LMA はこの設計図ファイルが公開されており、ボタン一つで全構成が立ち上がります。

AppSync AWS のマネージド GraphQL(効率的なデータ取得の規格)サービスです。かんたんに言うと「Web UI とバックエンドの間でリアルタイムにデータをやり取りする橋渡し役」です。LMA では文字起こし結果をブラウザに即座に表示するために使われています。

Fargate AWS のサーバーレスコンテナ(アプリをまとめて動かす仮想的な箱)実行環境です。かんたんに言うと「サーバーの管理を AWS に任せつつ、アプリだけを動かせる仕組み」です。LMA の WebSocket サーバー(常時接続を管理するサーバー)のホスティングに使われています。

Bedrock Knowledge Base ベクトルデータベース(意味の近さで情報を整理するデータベース)を使ったセマンティック検索機能です。かんたんに言うと「キーワードが一致しなくても、意味が近い情報を見つけ出してくれる賢い検索機能」です。過去の会議録を自然な言葉で横断検索するのに使われています。

UBAC(User-Based Access Control) ユーザーベースアクセス制御のことです。かんたんに言うと「誰がどの会議データを見られるかをユーザー単位で細かく設定する仕組み」です。機密性の高い会議でも、関係者だけにデータを公開する運用が可能です。

Kinesis Data Streams AWS のリアルタイムデータストリーミングサービスです。かんたんに言うと「大量のデータを川の流れのようにリアルタイムで送り続けられるパイプ」です。LMA では Amazon Transcribe の文字起こし結果を他のコンポーネントへ即時配信するために使われています。


LMA はデプロイの手間こそかかりますが、一度動き出せば会議の記録・翻訳・AI 応答が完全に自動化されます。ぜひ社内の多言語ミーティングや重要プロジェクトの議事録自動化、さらには過去会議の横断検索によるナレッジベース構築などに活用してみてはいかがでしょうか。